KONAMIは本日(2月14日),フィーチャーフォン&スマートフォン向けソーシャルコンテンツ「」のサービスを,GREEプラットフォームで開始した()。
同タイトルは,全国47都道府県の名所や名産物をモチーフにした女の子達のカードを集めて遊ぶ,カードバトルタイプのゲームで,「ラブプラス」シリーズの生みの親である内田明理氏と,同シリーズのキャラクターデザインを手掛けてきたミノ☆タロー氏がタッグを組んで誕生したものだ。
ゲームシステムは,大ヒット作「」をはじめとする,同社のコレクションシリーズがベースだ。そのため基本的な進行は,ミッションをこなしてカードを集め,デッキを揃えてボスと戦ったり,ほかのプレイヤーと対戦したり……という,おなじみのスタイルを踏襲している。
本作の大きな特徴の一つは,すべてのキャラクターデザインおよびカードイラストの監修を,ミノ☆タロー氏が手がけている点。昨今のカードバトルゲームでは,さまざまなイラストレーターを起用した,多彩なテイストのイラストをウリにするのが一般的だが,本作では逆に“絵柄を統一”することで,キャラクター達の個性を際立たせることを狙っている。
また,演出面も本作の大きな特徴だ。“個性的”という枠を超えている女の子達から飛び出すセリフの一つ一つ,効果音を表す描き文字,チラリと見える背景,ガチャでカードを引いたときのアクションなど,大きくコミカルに振り切った演出が,そこかしこにちりばめられている。
ラブプラスシリーズや「ときめきメモリアル Girl's Side」シリーズ,「とんがりボウシ」シリーズといった,これまでの作品とは大きく異なるアプローチながら,細部までネタを作り込む姿勢は,やはり彼らが所属するラブプラスプロダクションらしさのあらわれといえるだろう。
今回は,そんな彼らがソーシャルコンテンツに挑むに至った経緯や,本作の今後の展開,そして将来的な展望などを,シニアプロデューサー?内田明理氏と,キャラクターデザインのミノ☆タロー氏のお二人に聞いてみた。
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
いきなりの発表で驚いたんですが,「風雲!なでしこコレクション」という作品を手がけるに至ったきっかけから教えてください。
内田明理氏(以下,内田氏):
ご存じのとおり,私達は,ラブプラスや,ときめきメモリアル Girl's Sideなど,“キャラクター”をメインに据えたコンテンツを多数手がけてきました。おかげさまで,そこそこ評価していただいています。
その一方,弊社は「ドラゴンコレクション」(ドラコレ)をはじめとするソーシャルコンテンツの開発?運営も行っています。そこで何か新しいことができないかと……。
4Gamer:
そう考えるに至った,直接的なきっかけなどはありましたか?
内田氏:
きっかけは,ドラコレの大躍進を間近で見ている中で,僕らの培ってきたキャラクターという切り口を,ソーシャルコンテンツでもうまく活用できないかと考えたことですね。
ここ数年のソーシャルコンテンツ市場の拡大は,決して無視できるものではありません。その中で僕らも何か新しい挑戦をしてみたいな,と。
4Gamer:
KONAMIも含め,各社でさまざまな取り組みをしている分野ですよね。それを見ていて,いても立ってもいられない気分になったということでしょうか?
内田氏:
ええ,そういうことです。
で,実際に何をやるかを考えるにあたって,弊社のソーシャルコンテンツを僕らなりに分析したんですが,ドラコレにしても「」にしても,お客様に興味を持っていただける“ネタ”の部分が非常に強いんですよ。
例えば戦コレには,織田信長が登場しますけれど,もう“信長”と言ったら,日本国民のほとんどが人物像を知っているわけです。
4Gamer:
義務教育でも出てきますからね。
内田氏:
一方,僕らの得意とするキャラクターの手法──こういう人物がいて,こういう性格で,ゲームを進めて付き合いが深まると,実はこういう側面も見えてきて……というような部分を,ソーシャルコンテンツのカードゲームで表現しようとすると,なかなか伝えきれないことになるでしょう。
4Gamer:
カードの種類が豊富になればなるほど,一人一人を掘り下げるのには限界がありますよね。
内田氏:
それでもなお,オリジナルのキャラクターを作り出すことは,僕らの宿命であり,誇りとするところです。
そこで,思い切って発想を変えたんです。まず,カードゲームのキャラクターを作るにあたり,日本国民が誰でも分かる共通概念をキャラクター化してしまおう,と。それが47都道府県の“ご当地”をモチーフにすることでした。
4Gamer:
一気に飛躍した気がしますが(笑)。
内田氏:
いやいや,例えば“柧堡巫婴坤盲郡椋俊·瓤激à毪龋毡竟瘠希`ルでお高くとまった子を思い浮かべますよね。“大阪”が女の子だったら,きっとコテコテな子だろう,とか。
4Gamer:
つまり,ゼロからキャラクターのイメージを作り上げて掘り下げていくのではなく,日本国民が抱いているであろう47都道府県のイメージをモチーフにすることで,キャラクターの印象をある程度担保しつつ,間口を広げようということでしょうか?
内田氏:
はい。そういったことができるんじゃないかと。
4Gamer:
それは,いつ頃から考えていたことなんでしょう?
内田氏:
発端は,かなり前ですね。
ミノ☆タロー氏:
それこそ「」のプロモーション用イラストを描きながら企画書を作っていました。
4Gamer:
なるほど。
ちなみに,全カードのイラストを,ミノ☆タローさんが手がけるというのは,最初から決まっていたんですか?
ミノ☆タロー氏:
当初は,ほかのカードゲームのように,いろんな作家さんに描いていただいて,その中の一部を僕が担当するという話だったんですよ。それがある日,「全部,お前がやれ」と言われて。
内田氏:
「ミノ☆タロー推しでいこう」と。
ミノ☆タロー氏:
そう言いながらも「絵柄は今までとちょっと変えよう」とか言い出すんですよ,この人(笑)。
4Gamer:
実際,ミノ☆タローさんは,どこまでイラストに携わっているんですか?
ミノ☆タロー氏:
最初から最後まで自分で描いているイラストもあるんですが,基本的にはキャラクターデザインと作画監督をやっています。
4Gamer:
ミノ☆タローさん推しなのに,絵柄を変更するというのは,内田さんのアイデアですか?
内田氏:
アイデアというほどではないんですが,風雲!なでしこコレクションはラブプラスと明らかにノリが違うので,DQ10 RMT,似たような絵柄では,うまくシャレにできないと思ったんです。
そこでタッチを漫画っぽい感じに寄せて,“the キャラクター”というところを狙ったわけです。
ミノ☆タロー氏:
僕自身も,これだけソーシャルのカードゲームがある世の中で,繊細な美麗イラストで勝負しても埋もれてしまうだろうという考えはありました。
そこで思い切って,ゲーム全体を通して漫画やアニメ調のコミックデザインでいこうと考えました。
4Gamer:
この作品では,イラストだけではなく,女の子一人一人のキャラを立たせるための工夫が凝らされていますよね。
内田氏:
ええ,僕らはラブプラスやときめきメモリアル Girl's Sideで,「一人の人間を描こうとするなら,記号化したキャラクターは避けたほうがいい」と言ってきました。
ところが今回は逆に,“キャラクターを描く”ことに挑戦したんです。「キャラクターって,どう描くんだろう?」という勉強もしました。
4Gamer:
つまり,先ほどおっしゃった,カードゲームにおけるオリジナルキャラクターの表現について試行錯誤してきたと。
内田氏:
はい。だから慣れないうちは苦労したんですが……ミノ☆タローはすごく器用で,気付けば何でも描けるようになっているんです。
ミノ☆タロー氏:
今回の仕事で,僕も“ミノ☆タロー Ver.3”みたいな感じになりましたよ(笑)。
内田氏:
「ライトノベルの表紙になりそうなキャラ描いてよ」という無茶振りにも,「こんな感じかなあ」と,すぐ応えてくれて。
ミノ☆タロー氏:
ああ,“妹寿司”の築地はるみとか(笑)。
内田氏:
もちろん,それだけじゃなくて,マスコット的なキャラを描いたり,ギャルゲー全開みたいなキャラを描いたり。
4Gamer:
実際,ミノ☆タローさんとしては,そういった今までと違う作業をどう考えているんですか?
ミノ☆タロー氏:
いろんなネタを考えるのが,とにかく大変です。
内田氏:
でも経験としては,楽しいでしょう? 今まで封印してきた“キャラクターの記号”を,思いっきり描けるわけだから。
ミノ☆タロー氏:
確かに楽しいですね。今まで,「こういうのはいかん」と律してきたことを,逆に「どんどんやれ」と言われているわけですからね。
内田氏:
だって,この子なんてカニですよ。頭にカニが付いてる(笑)。
ミノ☆タロー氏:
蟹山カニ子(笑)。横歩きしかできなくて,「前に走れないカニ」とか言うんです。
4Gamer:
そこまでやられちゃうと,笑うしかないですね。
内田氏:
そういう面白い“壊れかた”を目指しています。
4Gamer:
キャラクターのネタを作るにあたって,何か配慮していることはありますか?
ミノ☆タロー氏:
僕らのほうからは軽くネタを提供するだけにとどめて,受け取ったお客様に,頭の中でいろいろ話を膨らませてもらえるようなキャラ作りを意識しています。
内田氏:
47都道府県にネタ振りをして,「あとは面白く料理してください」と(笑)。
4Gamer:
おそらく,あまり詳しくない都道府県もあったかと思うのですが。
内田氏:
確かにあります。なので面白そうなネタを見つけたら,その地域に詳しい人を社内から探してきて監修させたりもしています。「沖縄出身の人,いませんかー」とか。
ミノ☆タロー氏:
そうすると,たいてい「何でウチの県は,このキャラなの?」と聞いて来るんですよ。「そのうち,いいキャラが出るから」と言って,納得させていますけど。
内田氏:
今回重視しているのは,“ほかの県から見たイメージ”なんです。だから,その県の出身者からすると,ちょっと違うかもしれません。別にバカにしているわけではないんですが。
ミノ☆タロー氏:
滋賀を忍者モチーフの子にしたら,滋賀県出身のスタッフから,かなり怒られましたね。僕自身は,すごくお気に入りなんですが。
内田氏:
“外国の方が取り違えた日本の文化”みたいですよね。カードのデザインも,外来文化が入ってくる明治時代っぽくもあったり。まあ,何だかんだで楽しくやらせてもらっています。
ミノ☆タロー氏:
もう200体分のネタを考えたんで,さすがにしんどくなってきましたけど。
内田氏:
そんなこと言わずに頑張っていこうよ(笑)。
4Gamer:
200体というと,都道府県それぞれに,複数の女の子が出てくるわけですか? 「もっといいキャラが出る」みたいなことをおっしゃっていましたが。
ミノ☆タロー氏:
そうです。最初は1体ずつですが,随時追加していきます。例えば北海道なら,マリモの子もいれば,時計台の子もいます。
さらに,女の子は最初は制服姿なんですけど,レアリティによって「ご当地変身」「スーパーご当地変身」など,数段階にパワーアップ変身していきます。そのほか,キャラの魅力を掘り下げるスチルイラスト仕様のカードもあります。僕としては,1枚でも多くのイラストを見てほしいですね。
4Gamer:
先ほどのお話だと,企画自体はかなり前からあったということですよね。今でも新しいネタを考えて描いているとなると,イラストのタッチが変わったりしませんか?
ミノ☆タロー氏:
実際,変わっていますよ。それで注意されることもあるくらいです(笑)。
僕の場合,「こういう絵を描きたい!」という確固たる信念を持っているタイプではないので……。
内田氏:
僕は企画初期のタッチが好きですね……。
ミノさんは器用だから,新しいタッチをどんどん習得していくので,常に変化しているんです。
4Gamer:
そのほか,キャラクターについて,とくにここを見てほしいという部分はありますか?
内田氏:
ネーミングセンスですね。
ミノ☆タロー氏:
ラブプラスの「プチ夢イベント」みたいなノリで考えています。
内田氏:
青森の恐山むつ子(おそれやまむつこ)とか,柧─?strong class="bold9">大門ていと(だいもんていと)とか。最初は分からないけれど,よく考えると,その都道府県との関連が分かるようになっています。
ミノ☆タロー氏:
もし分からないようであれば,いろいろ調べてみてほしいです。ゆくゆくは,プレイしていると,自然に日本の地理や各地の名産物を覚えられるようなゲームになるといいですよね。
内田氏:
あとは福岡の長浜紅生(ながはまべにお)とか……そういえば,麺類絡みが多いんですよ。香川の釜上鶴里(かまあげつるり)とかもそうですね。「“なでしこ”であるまえに,“ツルツルシコシコ”でありたい」という,ツンデレ系の子なんですけど。
4Gamer:
そういうのも,真面目な会議で話し合っているんですか?
ミノ☆タロー氏:
ええ。至って真面目に会議で決めています。端から見るとちょっとシュールです(笑)。
ともあれ,そうやって出来上がったキャラクターが,皆さんから怒られないといいなあ,と思っています。
内田氏:
広い心で受け止めてほしいですね。
ミノ☆タロー氏:
逆に,皆さんからネタを募集することも,今まさに検討しているんです。「地元の人だけが知っているローカルなネタを送ってくれたら,ミノ☆タローがイラストを描くよ!」みたいな感じで。
内田氏:
各地の名物を売っている企業さんや個人商店さん,商工会さんとかも,ぜひ検討していただきたいです。
ミノ☆タロー氏:
僕は大阪出身なんで,「蓬○の豚まん」のイラストを描くお話が来たらうれしいです。僕,大好きなんですよ。
内田氏:
じゃあ茅ヶ崎の「奉○最中」もぜひ。
ミノ☆タロー氏:
もうすでに,勝手に描いているものもありますしね。最近の“萌え米”ブームに何とか乗っかれないかと(笑)。
内田氏:
新潟の魚沼 光(うおぬまひかり)という子がいまして,普段,部活のマネージャーをやっているという設定なので,「どん米」というイラストにしてみました。
……魚沼のコシヒカリ限定になってしまうんですが,「使ってみたい」というご希望があれば,ご連絡ください。
4Gamer:
何だか,よく分からないビジネスモデルの宣伝の場になってきましたが。
内田氏:
「勝手に描いてみたんで,よかったら使ってください」というビジネスモデル(笑)。しかも,最近話題の“ゆるキャラ”じゃないですからね。“国民的カノジョ”でお馴染みのミノ☆タローが,ちゃんと考えて描いた,いわば“固(かた)キャラ”ですから。ぜひご当地キャラとして,ゆるキャラと一緒に並べてほしいです。
ミノ☆タロー氏:
栃木の「レ○ン牛乳」とか,今はなくなっちゃった大阪の「パ○ナス」なんかも,すごく描いてみたいので,なんとか許可をいただけると嬉しいです。
4Gamer:
同じ種類のお菓子が,各地で別々の名前で売られているケースもあるじゃないですか。そういうのを一つ一つキャラクターにしてほしいですね。
ミノ☆タロー氏:
ああ,そういうのは生き別れの姉妹とかにすると面白そうですね。
4Gamer:
ところで,今までのお話を含めて,ドラクエ10 RMT,ゲームに留まらないキャラクターのビジネス展開について,具体的に話は進んでいるんですか?
内田氏:
ここまで盛り上げておいてなんですが,ビジネスが絡むと僕らだけでは勝手に話を進められないので,具体的になるのはこれからです。
せっかくですから,何かに発展させたいと考えているのは確かですけれど。
ミノ☆タロー氏:
今,実現しそうなのは,ご当地のローカルネタを送っていただいて,それを僕がイラストにしてゲーム内に反映するところまでですね。
4Gamer:
先ほど,実際にゲームをプレイさせていただいたんですが,演出にこだわっているという印象を受けました。いかにして演出をスキップさせずに見せるか,という工夫がありますよね。
ミノ☆タロー氏:
まさに“スキップさせない”というのが,演出上の最大のテーマでした。と言うのも,キャラクターがどんなセリフをしゃべるのかを見てもらわないと,その魅力が伝わらないからなんです。いかにセリフを短く,インパクトのあるものにするかについては,かなり頭をひねっています。
内田氏:
僕自身,自分でセリフを担当して,どんどん好きになっていった子がいますよ。
4Gamer:
ミッションをクリアしたときのセリフも,キャラクターそれぞれの個性が出ていて,「濃いなあ」と。
ミノ☆タロー氏:
たとえば鵜飼いの子だったら,きちんと鵜飼いの歴史を調べてセリフを書いていますからね。そういう意味では,自分が詳しくない地域の子がゲームに出てきても,新しい発見があると思います。
よくある“ご当地モノ”になってしまってはあまり面白くありませんから,そういう部分には,かなり時間をかけています。
内田氏:
繰り返しになりますけど,僕らが“the キャラクター”を作ってみた作品ですので,キャラクター好きの方に見てほしいですね。
もし,「コレジャナイ!」と思ったら,そう言っていただければ,不評なので新キャラ登場! ということもできますからね。
4Gamer:
オンラインゲームならの強みですね。
ミノ☆タロー氏:
そこは本当に,皆さんと一緒に作っていくことを意識しています。
内田氏:
ただし! ミノさんの監修は厳しいです(笑)。
ミノ☆タロー氏:
描き直しの理由が「笑えない」とか,「この子は何もしゃべってくれません」ですからね。
4Gamer:
なるほど。見ただけで,どんなことをしゃべるのか想像できるようでないとダメだと。
ミノ☆タロー氏:
最終的に皆さんにお話を広げてもらうためには,そこまで行っていないとダメだと思うんですよ。
内田氏:
やっぱり忍者は「拙者,忍者でござる。ドロンドロン」とか言いそうでないと(笑)。
ミノ☆タロー氏:
だから,滋賀の人に怒られちゃうんですけどね。「滋賀の女の子は,“拙者”なんて言わない」とか(笑)。
内田氏:
もし,ものすごく怒られたら,次の日からその子の名前や設定が変わったり,いなくなってしまったりするかもしれないので,一期一会のつもりで,1日1日を大切にプレイしてほしいですね。
4Gamer:
なんでそんなに冒険しちゃったんですか(笑)。
ミノ☆タロー氏:
そこに山があるから,としか言えないですよ。
内田氏:
ここ数年,僕もミノさんもリアルなキャラクター造形ばかりでやっていましたからね。ちょっと爆発しちゃったのかな。
ミノ☆タロー氏:
今回,姿勢としては,各都道府県に最大のリスペクトを持って臨んでいるつもりなんですが,「ふざけている」と受け止められてしまったら,僕らの努力が足りないということですから。
ただ,ウチはラブからコメディまで,幅広く行くんだということをご理解いただけると嬉しいです。
4Gamer:
まとめると,風雲!なでしこコレクションとは,内田さんやミノさん達が大真面目にふざけたことをやっているプロジェクトであり,とくにキャラクター作りにおいて,意識して,これまでとは正反対とも言えるアプローチを取っていると。
ミノ☆タロー氏:
ええ。単にドラコレシリーズの一つとしてカードイラストを描きましたということではなく,コンシューマゲームで培ったキャラクター作りのノウハウを,妥協せず,女の子全員に投入しています。
内田氏:
カードゲームでは,カードを合成して進化させて強くしていくことが正義ですが,このタイトルでは,キャラクターに愛着を持ってしまったがゆえに,あえて進化させないというお客様が出てくるかもしれません。
「ゲーム上,不利でもいい。オレは,今のこの子が好きなんだ」という方がいたら面白いと思いますし,そこまでしてくださったら僕らとしても嬉しいです。
4Gamer:
分かりました。それでは最後に,風雲!なでしこコレクションに興味を持った人に向けて,メッセージをお願いします。
内田氏:
これまでの僕らが手がけてきた作品がお好きな方には意外な展開かもしれませんが,ぜひ,注目していただけると嬉しいです。
プレイしていただければきっと楽しんでもらえると思います。皆さんと一緒に遊べたら嬉しいです。
ミノ☆タロー氏:
日本全国の皆さんの力を借りて,これからの運営開発を進めていきます。プレイしていただく中で,「プッ」と笑っていただけることを願って作っていますので,ぜひよろしくお願いします。
4Gamer:
ありがとうございました。
これまでの内田氏やミノ☆タロー氏の取り組みを知る人なら,彼らがソーシャルコンテンツを創ると聞くと,いろいろ想像が膨らむところかもしれない。
ところが,風雲!なでしこコレクションは,システム的にはドラコレの流れを汲むド直球のカードバトルゲームである。それでいて,多くの人が慣れ親しんだ概念を,手間暇かけて,いかに面白く料理して見せるかという彼らのチャレンジが,ふんだんに込められているのだ。
それは,彼らがラブプラスで恋愛ゲームというジャンルを改革してみせたときの姿勢と何ら変わらない。ぜひ実際にゲームをプレイして,彼らの心意気を感じ取ってほしい。
同タイトルは,全国47都道府県の名所や名産物をモチーフにした女の子達のカードを集めて遊ぶ,カードバトルタイプのゲームで,「ラブプラス」シリーズの生みの親である内田明理氏と,同シリーズのキャラクターデザインを手掛けてきたミノ☆タロー氏がタッグを組んで誕生したものだ。
ゲームシステムは,大ヒット作「」をはじめとする,同社のコレクションシリーズがベースだ。そのため基本的な進行は,ミッションをこなしてカードを集め,デッキを揃えてボスと戦ったり,ほかのプレイヤーと対戦したり……という,おなじみのスタイルを踏襲している。
本作の大きな特徴の一つは,すべてのキャラクターデザインおよびカードイラストの監修を,ミノ☆タロー氏が手がけている点。昨今のカードバトルゲームでは,さまざまなイラストレーターを起用した,多彩なテイストのイラストをウリにするのが一般的だが,本作では逆に“絵柄を統一”することで,キャラクター達の個性を際立たせることを狙っている。
また,演出面も本作の大きな特徴だ。“個性的”という枠を超えている女の子達から飛び出すセリフの一つ一つ,効果音を表す描き文字,チラリと見える背景,ガチャでカードを引いたときのアクションなど,大きくコミカルに振り切った演出が,そこかしこにちりばめられている。
ラブプラスシリーズや「ときめきメモリアル Girl's Side」シリーズ,「とんがりボウシ」シリーズといった,これまでの作品とは大きく異なるアプローチながら,細部までネタを作り込む姿勢は,やはり彼らが所属するラブプラスプロダクションらしさのあらわれといえるだろう。
今回は,そんな彼らがソーシャルコンテンツに挑むに至った経緯や,本作の今後の展開,そして将来的な展望などを,シニアプロデューサー?内田明理氏と,キャラクターデザインのミノ☆タロー氏のお二人に聞いてみた。
KONAMIが持つソーシャルコンテンツのノウハウに
得意とするキャラクター手法を投入
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
いきなりの発表で驚いたんですが,「風雲!なでしこコレクション」という作品を手がけるに至ったきっかけから教えてください。
ご存じのとおり,私達は,ラブプラスや,ときめきメモリアル Girl's Sideなど,“キャラクター”をメインに据えたコンテンツを多数手がけてきました。おかげさまで,そこそこ評価していただいています。
その一方,弊社は「ドラゴンコレクション」(ドラコレ)をはじめとするソーシャルコンテンツの開発?運営も行っています。そこで何か新しいことができないかと……。
4Gamer:
そう考えるに至った,直接的なきっかけなどはありましたか?
内田氏:
きっかけは,ドラコレの大躍進を間近で見ている中で,僕らの培ってきたキャラクターという切り口を,ソーシャルコンテンツでもうまく活用できないかと考えたことですね。
ここ数年のソーシャルコンテンツ市場の拡大は,決して無視できるものではありません。その中で僕らも何か新しい挑戦をしてみたいな,と。
4Gamer:
KONAMIも含め,各社でさまざまな取り組みをしている分野ですよね。それを見ていて,いても立ってもいられない気分になったということでしょうか?
内田氏:
ええ,そういうことです。
で,実際に何をやるかを考えるにあたって,弊社のソーシャルコンテンツを僕らなりに分析したんですが,ドラコレにしても「」にしても,お客様に興味を持っていただける“ネタ”の部分が非常に強いんですよ。
例えば戦コレには,織田信長が登場しますけれど,もう“信長”と言ったら,日本国民のほとんどが人物像を知っているわけです。
4Gamer:
義務教育でも出てきますからね。
内田氏:
一方,僕らの得意とするキャラクターの手法──こういう人物がいて,こういう性格で,ゲームを進めて付き合いが深まると,実はこういう側面も見えてきて……というような部分を,ソーシャルコンテンツのカードゲームで表現しようとすると,なかなか伝えきれないことになるでしょう。
4Gamer:
カードの種類が豊富になればなるほど,一人一人を掘り下げるのには限界がありますよね。
内田氏:
それでもなお,オリジナルのキャラクターを作り出すことは,僕らの宿命であり,誇りとするところです。
そこで,思い切って発想を変えたんです。まず,カードゲームのキャラクターを作るにあたり,日本国民が誰でも分かる共通概念をキャラクター化してしまおう,と。それが47都道府県の“ご当地”をモチーフにすることでした。
4Gamer:
一気に飛躍した気がしますが(笑)。
内田氏:
いやいや,例えば“柧堡巫婴坤盲郡椋俊·瓤激à毪龋毡竟瘠希`ルでお高くとまった子を思い浮かべますよね。“大阪”が女の子だったら,きっとコテコテな子だろう,とか。
4Gamer:
つまり,ゼロからキャラクターのイメージを作り上げて掘り下げていくのではなく,日本国民が抱いているであろう47都道府県のイメージをモチーフにすることで,キャラクターの印象をある程度担保しつつ,間口を広げようということでしょうか?
内田氏:
はい。そういったことができるんじゃないかと。
4Gamer:
それは,いつ頃から考えていたことなんでしょう?
内田氏:
発端は,かなり前ですね。
それこそ「」のプロモーション用イラストを描きながら企画書を作っていました。
4Gamer:
なるほど。
ちなみに,全カードのイラストを,ミノ☆タローさんが手がけるというのは,最初から決まっていたんですか?
ミノ☆タロー氏:
当初は,ほかのカードゲームのように,いろんな作家さんに描いていただいて,その中の一部を僕が担当するという話だったんですよ。それがある日,「全部,お前がやれ」と言われて。
内田氏:
「ミノ☆タロー推しでいこう」と。
ミノ☆タロー氏:
そう言いながらも「絵柄は今までとちょっと変えよう」とか言い出すんですよ,この人(笑)。
4Gamer:
実際,ミノ☆タローさんは,どこまでイラストに携わっているんですか?
ミノ☆タロー氏:
最初から最後まで自分で描いているイラストもあるんですが,基本的にはキャラクターデザインと作画監督をやっています。
4Gamer:
ミノ☆タローさん推しなのに,絵柄を変更するというのは,内田さんのアイデアですか?
内田氏:
アイデアというほどではないんですが,風雲!なでしこコレクションはラブプラスと明らかにノリが違うので,DQ10 RMT,似たような絵柄では,うまくシャレにできないと思ったんです。
そこでタッチを漫画っぽい感じに寄せて,“the キャラクター”というところを狙ったわけです。
ミノ☆タロー氏:
僕自身も,これだけソーシャルのカードゲームがある世の中で,繊細な美麗イラストで勝負しても埋もれてしまうだろうという考えはありました。
そこで思い切って,ゲーム全体を通して漫画やアニメ調のコミックデザインでいこうと考えました。
各都道府県を勝手なイメージで擬人化
各地出身者からの反応は……
4Gamer:
この作品では,イラストだけではなく,女の子一人一人のキャラを立たせるための工夫が凝らされていますよね。
内田氏:
ええ,僕らはラブプラスやときめきメモリアル Girl's Sideで,「一人の人間を描こうとするなら,記号化したキャラクターは避けたほうがいい」と言ってきました。
ところが今回は逆に,“キャラクターを描く”ことに挑戦したんです。「キャラクターって,どう描くんだろう?」という勉強もしました。
4Gamer:
つまり,先ほどおっしゃった,カードゲームにおけるオリジナルキャラクターの表現について試行錯誤してきたと。
内田氏:
はい。だから慣れないうちは苦労したんですが……ミノ☆タローはすごく器用で,気付けば何でも描けるようになっているんです。
ミノ☆タロー氏:
今回の仕事で,僕も“ミノ☆タロー Ver.3”みたいな感じになりましたよ(笑)。
内田氏:
「ライトノベルの表紙になりそうなキャラ描いてよ」という無茶振りにも,「こんな感じかなあ」と,すぐ応えてくれて。
ミノ☆タロー氏:
ああ,“妹寿司”の築地はるみとか(笑)。
内田氏:
もちろん,それだけじゃなくて,マスコット的なキャラを描いたり,ギャルゲー全開みたいなキャラを描いたり。
4Gamer:
実際,ミノ☆タローさんとしては,そういった今までと違う作業をどう考えているんですか?
ミノ☆タロー氏:
いろんなネタを考えるのが,とにかく大変です。
内田氏:
でも経験としては,楽しいでしょう? 今まで封印してきた“キャラクターの記号”を,思いっきり描けるわけだから。
ミノ☆タロー氏:
確かに楽しいですね。今まで,「こういうのはいかん」と律してきたことを,逆に「どんどんやれ」と言われているわけですからね。
内田氏:
だって,この子なんてカニですよ。頭にカニが付いてる(笑)。
ミノ☆タロー氏:
蟹山カニ子(笑)。横歩きしかできなくて,「前に走れないカニ」とか言うんです。
4Gamer:
そこまでやられちゃうと,笑うしかないですね。
内田氏:
そういう面白い“壊れかた”を目指しています。
4Gamer:
キャラクターのネタを作るにあたって,何か配慮していることはありますか?
ミノ☆タロー氏:
僕らのほうからは軽くネタを提供するだけにとどめて,受け取ったお客様に,頭の中でいろいろ話を膨らませてもらえるようなキャラ作りを意識しています。
内田氏:
47都道府県にネタ振りをして,「あとは面白く料理してください」と(笑)。
4Gamer:
おそらく,あまり詳しくない都道府県もあったかと思うのですが。
内田氏:
確かにあります。なので面白そうなネタを見つけたら,その地域に詳しい人を社内から探してきて監修させたりもしています。「沖縄出身の人,いませんかー」とか。
ミノ☆タロー氏:
そうすると,たいてい「何でウチの県は,このキャラなの?」と聞いて来るんですよ。「そのうち,いいキャラが出るから」と言って,納得させていますけど。
内田氏:
今回重視しているのは,“ほかの県から見たイメージ”なんです。だから,その県の出身者からすると,ちょっと違うかもしれません。別にバカにしているわけではないんですが。
ミノ☆タロー氏:
滋賀を忍者モチーフの子にしたら,滋賀県出身のスタッフから,かなり怒られましたね。僕自身は,すごくお気に入りなんですが。
内田氏:
“外国の方が取り違えた日本の文化”みたいですよね。カードのデザインも,外来文化が入ってくる明治時代っぽくもあったり。まあ,何だかんだで楽しくやらせてもらっています。
ミノ☆タロー氏:
もう200体分のネタを考えたんで,さすがにしんどくなってきましたけど。
内田氏:
そんなこと言わずに頑張っていこうよ(笑)。
4Gamer:
200体というと,都道府県それぞれに,複数の女の子が出てくるわけですか? 「もっといいキャラが出る」みたいなことをおっしゃっていましたが。
ミノ☆タロー氏:
そうです。最初は1体ずつですが,随時追加していきます。例えば北海道なら,マリモの子もいれば,時計台の子もいます。
さらに,女の子は最初は制服姿なんですけど,レアリティによって「ご当地変身」「スーパーご当地変身」など,数段階にパワーアップ変身していきます。そのほか,キャラの魅力を掘り下げるスチルイラスト仕様のカードもあります。僕としては,1枚でも多くのイラストを見てほしいですね。
4Gamer:
先ほどのお話だと,企画自体はかなり前からあったということですよね。今でも新しいネタを考えて描いているとなると,イラストのタッチが変わったりしませんか?
ミノ☆タロー氏:
実際,変わっていますよ。それで注意されることもあるくらいです(笑)。
僕の場合,「こういう絵を描きたい!」という確固たる信念を持っているタイプではないので……。
内田氏:
僕は企画初期のタッチが好きですね……。
ミノさんは器用だから,新しいタッチをどんどん習得していくので,常に変化しているんです。
各地の名産物を募集する企画も進行中!?
勝手に描いたものもすでにあり!
4Gamer:
そのほか,キャラクターについて,とくにここを見てほしいという部分はありますか?
内田氏:
ネーミングセンスですね。
ミノ☆タロー氏:
ラブプラスの「プチ夢イベント」みたいなノリで考えています。
内田氏:
青森の恐山むつ子(おそれやまむつこ)とか,柧─?strong class="bold9">大門ていと(だいもんていと)とか。最初は分からないけれど,よく考えると,その都道府県との関連が分かるようになっています。
ミノ☆タロー氏:
もし分からないようであれば,いろいろ調べてみてほしいです。ゆくゆくは,プレイしていると,自然に日本の地理や各地の名産物を覚えられるようなゲームになるといいですよね。
内田氏:
あとは福岡の長浜紅生(ながはまべにお)とか……そういえば,麺類絡みが多いんですよ。香川の釜上鶴里(かまあげつるり)とかもそうですね。「“なでしこ”であるまえに,“ツルツルシコシコ”でありたい」という,ツンデレ系の子なんですけど。
【福岡】長浜紅生(ながはまべにお) 日本一早い?安い?うまいラーメン屋を志す屋台の少女。 お客さんがのれんをくぐって座るまでの間にラーメンを完成させている。 麺は生だがまぁよかばい。 | |
【香川】釜上鶴里(かまあげつるり) 細腕で手打ちした自家製麺が自慢のうどん屋の娘。 コシの強さとなめらかなのどごしに惚れ込んだお客さんで店は一杯。 麺打ちに腰を入れるあまり、夏場はすぐノドが渇くのが悩み。 |
4Gamer:
そういうのも,真面目な会議で話し合っているんですか?
ミノ☆タロー氏:
ええ。至って真面目に会議で決めています。端から見るとちょっとシュールです(笑)。
ともあれ,そうやって出来上がったキャラクターが,皆さんから怒られないといいなあ,と思っています。
内田氏:
広い心で受け止めてほしいですね。
ミノ☆タロー氏:
逆に,皆さんからネタを募集することも,今まさに検討しているんです。「地元の人だけが知っているローカルなネタを送ってくれたら,ミノ☆タローがイラストを描くよ!」みたいな感じで。
内田氏:
各地の名物を売っている企業さんや個人商店さん,商工会さんとかも,ぜひ検討していただきたいです。
ミノ☆タロー氏:
僕は大阪出身なんで,「蓬○の豚まん」のイラストを描くお話が来たらうれしいです。僕,大好きなんですよ。
内田氏:
じゃあ茅ヶ崎の「奉○最中」もぜひ。
ミノ☆タロー氏:
もうすでに,勝手に描いているものもありますしね。最近の“萌え米”ブームに何とか乗っかれないかと(笑)。
内田氏:
新潟の魚沼 光(うおぬまひかり)という子がいまして,普段,部活のマネージャーをやっているという設定なので,「どん米」というイラストにしてみました。
……魚沼のコシヒカリ限定になってしまうんですが,「使ってみたい」というご希望があれば,ご連絡ください。
4Gamer:
何だか,よく分からないビジネスモデルの宣伝の場になってきましたが。
内田氏:
「勝手に描いてみたんで,よかったら使ってください」というビジネスモデル(笑)。しかも,最近話題の“ゆるキャラ”じゃないですからね。“国民的カノジョ”でお馴染みのミノ☆タローが,ちゃんと考えて描いた,いわば“固(かた)キャラ”ですから。ぜひご当地キャラとして,ゆるキャラと一緒に並べてほしいです。
ミノ☆タロー氏:
栃木の「レ○ン牛乳」とか,今はなくなっちゃった大阪の「パ○ナス」なんかも,すごく描いてみたいので,なんとか許可をいただけると嬉しいです。
4Gamer:
同じ種類のお菓子が,各地で別々の名前で売られているケースもあるじゃないですか。そういうのを一つ一つキャラクターにしてほしいですね。
ミノ☆タロー氏:
ああ,そういうのは生き別れの姉妹とかにすると面白そうですね。
4Gamer:
ところで,今までのお話を含めて,ドラクエ10 RMT,ゲームに留まらないキャラクターのビジネス展開について,具体的に話は進んでいるんですか?
内田氏:
ここまで盛り上げておいてなんですが,ビジネスが絡むと僕らだけでは勝手に話を進められないので,具体的になるのはこれからです。
せっかくですから,何かに発展させたいと考えているのは確かですけれど。
ミノ☆タロー氏:
今,実現しそうなのは,ご当地のローカルネタを送っていただいて,それを僕がイラストにしてゲーム内に反映するところまでですね。
ラブプラスプロダクションが持つ
“コメディ”の部分を大きく打ち出した作品に
4Gamer:
先ほど,実際にゲームをプレイさせていただいたんですが,演出にこだわっているという印象を受けました。いかにして演出をスキップさせずに見せるか,という工夫がありますよね。
ミノ☆タロー氏:
まさに“スキップさせない”というのが,演出上の最大のテーマでした。と言うのも,キャラクターがどんなセリフをしゃべるのかを見てもらわないと,その魅力が伝わらないからなんです。いかにセリフを短く,インパクトのあるものにするかについては,かなり頭をひねっています。
内田氏:
僕自身,自分でセリフを担当して,どんどん好きになっていった子がいますよ。
4Gamer:
ミッションをクリアしたときのセリフも,キャラクターそれぞれの個性が出ていて,「濃いなあ」と。
ミノ☆タロー氏:
たとえば鵜飼いの子だったら,きちんと鵜飼いの歴史を調べてセリフを書いていますからね。そういう意味では,自分が詳しくない地域の子がゲームに出てきても,新しい発見があると思います。
よくある“ご当地モノ”になってしまってはあまり面白くありませんから,そういう部分には,かなり時間をかけています。
内田氏:
繰り返しになりますけど,僕らが“the キャラクター”を作ってみた作品ですので,キャラクター好きの方に見てほしいですね。
もし,「コレジャナイ!」と思ったら,そう言っていただければ,不評なので新キャラ登場! ということもできますからね。
4Gamer:
オンラインゲームならの強みですね。
ミノ☆タロー氏:
そこは本当に,皆さんと一緒に作っていくことを意識しています。
内田氏:
ただし! ミノさんの監修は厳しいです(笑)。
描き直しの理由が「笑えない」とか,「この子は何もしゃべってくれません」ですからね。
4Gamer:
なるほど。見ただけで,どんなことをしゃべるのか想像できるようでないとダメだと。
ミノ☆タロー氏:
最終的に皆さんにお話を広げてもらうためには,そこまで行っていないとダメだと思うんですよ。
内田氏:
やっぱり忍者は「拙者,忍者でござる。ドロンドロン」とか言いそうでないと(笑)。
ミノ☆タロー氏:
だから,滋賀の人に怒られちゃうんですけどね。「滋賀の女の子は,“拙者”なんて言わない」とか(笑)。
内田氏:
もし,ものすごく怒られたら,次の日からその子の名前や設定が変わったり,いなくなってしまったりするかもしれないので,一期一会のつもりで,1日1日を大切にプレイしてほしいですね。
4Gamer:
なんでそんなに冒険しちゃったんですか(笑)。
ミノ☆タロー氏:
そこに山があるから,としか言えないですよ。
内田氏:
ここ数年,僕もミノさんもリアルなキャラクター造形ばかりでやっていましたからね。ちょっと爆発しちゃったのかな。
ミノ☆タロー氏:
今回,姿勢としては,各都道府県に最大のリスペクトを持って臨んでいるつもりなんですが,「ふざけている」と受け止められてしまったら,僕らの努力が足りないということですから。
ただ,ウチはラブからコメディまで,幅広く行くんだということをご理解いただけると嬉しいです。
4Gamer:
まとめると,風雲!なでしこコレクションとは,内田さんやミノさん達が大真面目にふざけたことをやっているプロジェクトであり,とくにキャラクター作りにおいて,意識して,これまでとは正反対とも言えるアプローチを取っていると。
ミノ☆タロー氏:
ええ。単にドラコレシリーズの一つとしてカードイラストを描きましたということではなく,コンシューマゲームで培ったキャラクター作りのノウハウを,妥協せず,女の子全員に投入しています。
カードゲームでは,カードを合成して進化させて強くしていくことが正義ですが,このタイトルでは,キャラクターに愛着を持ってしまったがゆえに,あえて進化させないというお客様が出てくるかもしれません。
「ゲーム上,不利でもいい。オレは,今のこの子が好きなんだ」という方がいたら面白いと思いますし,そこまでしてくださったら僕らとしても嬉しいです。
4Gamer:
分かりました。それでは最後に,風雲!なでしこコレクションに興味を持った人に向けて,メッセージをお願いします。
内田氏:
これまでの僕らが手がけてきた作品がお好きな方には意外な展開かもしれませんが,ぜひ,注目していただけると嬉しいです。
プレイしていただければきっと楽しんでもらえると思います。皆さんと一緒に遊べたら嬉しいです。
ミノ☆タロー氏:
日本全国の皆さんの力を借りて,これからの運営開発を進めていきます。プレイしていただく中で,「プッ」と笑っていただけることを願って作っていますので,ぜひよろしくお願いします。
4Gamer:
ありがとうございました。
これまでの内田氏やミノ☆タロー氏の取り組みを知る人なら,彼らがソーシャルコンテンツを創ると聞くと,いろいろ想像が膨らむところかもしれない。
ところが,風雲!なでしこコレクションは,システム的にはドラコレの流れを汲むド直球のカードバトルゲームである。それでいて,多くの人が慣れ親しんだ概念を,手間暇かけて,いかに面白く料理して見せるかという彼らのチャレンジが,ふんだんに込められているのだ。
それは,彼らがラブプラスで恋愛ゲームというジャンルを改革してみせたときの姿勢と何ら変わらない。ぜひ実際にゲームをプレイして,彼らの心意気を感じ取ってほしい。
本作は,ユークスが開発し,THQが米国で2009年5月19日に発売し,同月に100万本以上の売り上げを記録したタイトルの日本語版だ。
「UFC」(Ultimate Fighting Championship)とは,米国のZuffaが運営し,世界規模で人気を博している総合格闘技の大会。「オクタゴン」と呼ばれる,金網で囲まれた八角形のリングで試合が行われるというのが大きな特徴で,2008年のPPV売り上げは2?000万ドルを記録している。
日本でもブームを起こしていた総合格闘技プロモーション「PRIDE」に関する権利は,現在,Zuffaのオーナーであるロレンゾ?フェティータ氏のもとにあり,事実上,UFCに吸収された形となっていると言えば,総合格闘技事情に疎い人でも,UFCの隆盛ぶりを想像できるのではないだろうか。
,本作にはUFC全階級(ヘビー級,ライトヘビー級,ミドル級,ウェルター級,ライト級)の選手の中から80名が実名,および本人そっくりのモデリングで登場。プレイヤーは彼らを操り,打撃や投げ技,関節技などを繰り出し,戦うことができるのだ。
細かく描き込まれたグラフィックスと,音声実況により,その様子がまるでテレビ中継のようなクオリティに仕上がっている点も,特筆すべきポイントだろう。
オリジナル選手を育て,UFCのチャンピオンを目指していく「キャリア」モードが用意されているほか,過去に行われた名勝負(例:「UFC71」のチャック?リデルvs.ランペイジ?ジャクソン,「UFC77」のアンデウソン?シウバvs.リッチ?フランクリンなど)をプレイヤーの手で再現すると,秘蔵実写映像を鑑賞できる「クラシックファイト」モードも搭載されている。
UFCファンのみならず,総合格闘技ファン,そして対戦格闘ゲームファンにとっても,楽しみな作品といえるだろう。
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